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PROJECT STORY / 02

富田工場プロジェクト

絶対に工場の稼働は止められない!
未経験の一大プロジェクトに
ベテラン技術者が挑む。

市民生活と切り離すことができないごみ焼却工場。およそ20年ごとに、老朽化に伴い計画的に更新等を行っていかなければならない。今回のプロジェクトはそのひとつ。平成元年から20年間稼働していた富田工場の再稼働に向けての設備更新事業だ。このプロジェクトチームのメインとなる3人の技術担当者に、担当業務の内容、プロジェクトの課題、そして今の心境などを語ってもらった。

富田工場プロジェクト

業務に線引きはない!
求められる専門領域を超えた幅広い知識

 名古屋市内にあるごみ焼却工場は2019年現在、最大規模の南陽工場をはじめ4工場ある。しかしこの南陽工場が設備更新の時期を迎えたことから、代わりとなる工場の整備が必要となった。そこで休止中であった富田工場の設備更新工事のプロジェクトが始まった。

 プロジェクトの最大の特徴は、既存の建屋を再利用し、設備のみを更新するということで、名古屋市としても初めての事業となった。解体事業は2017年に完了し、その後設備更新工事を行い、現在主だった機器の据付まで完了している。今後は試運転を経て、2020年7月の供用開始を予定している。

 この現場に名古屋市環境局の技術職員として現在関わっているのが、電気担当者2人と機械担当者1人の計3人だ。
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A「実際、プラントの設計から施工を担当するのは請負業者です。私は電気担当として、電気回路や通信回路の設置管理など、請負業者の設計担当者と協議を重ねてきました。ごみ焼却工場はいわば小さな発電所と同じなんです。熱も蒸気も使うので危険とは常に隣り合わせ。ですから稼働後に名古屋市の担当職員がいかに安全に、しかも動きやすいような環境にするかを最重視してきました」。

B「私は電気担当で、主な仕事は7万ボルトの受電に関わる部分です。実務経験を活かし、資格保持者として業務に当たっています。他にはガスなどのライフラインの契約なども担当しています」。

C「私は機械担当で、設計に基づき適正に施工されているかの管理がおもな業務ですが、実は電気担当者の業務とはっきりとした線引きはないんです。実際機械は電気で動くものですから、電気の知識がないと仕事はできません。これは電気担当者も同じです」。

 電気担当者は二人とも民間企業を経て、名古屋市に入庁している。前職では、担当業務が明確だったため、専門分野のみの技術や知識があればよかったが、入庁後に配属された職場では、幅広い知識や技術が要求され、そこで長年勤務をしたことにより、それらの知識や技術を得る事ができた。今回のプロジェクトでは、得た知識や技術を生かすことにより請負業者との協議や工事監理がスムーズにできていると、電気担当の2人は語る。
富田工場プロジェクト

幅広い公共工事で培った
自らの経験と感覚が指標に

 今回のプロジェクトは総事業費が約200億円。これだけ大規模の事業をおもに3人で担当している。その重責は想像以上に大きい。加えて、すべてを建て替える新築ではなく、建屋を再利用するという初めてのケースでは、稼働後の動線や機器の配置、メンテナンスの方法など、すべてが手探りの中で進んでいる。

C「まずは安全であること。そしてごみ焼却工場は、市民生活への影響が大きいので、動き出したら絶対に稼働を止めることはできないこと。そのために、万が一の場合を徹底的に請負業者と協議してきました。本当に安全か?設備に不具合が出た場合のバックアップは万全か?など先を見据えた話し合いを今も重ねています」。
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A「稼働したら20年間は動き続ける計画です。職員が運転するわけですから、いかに安全に使いやすいかということが重要になります。完成すれば、他工場の職員がこちらに異動してきます。今度の工場は使いやすいと言ってもらえることが目標でもあるんです」。

 今回の担当者3人は、他のごみ焼却工場での勤務経験がある。そこでの不具合調整も行ってきた。こうした現場経験があるからこそ、プロジェクトメンバーとして抜擢された。しかし何度経験しても、毎回新しい課題にぶつかる。そこには公共事業ゆえの難しさがあると。

A「請負業者は入札によって決まるため、毎回違う業者になります。どの業者も、よりよいものを一緒に作っていこう!という根本的な考え方は我々と同じですが、プラントの設計思想や作り込み方が当然違います。業者が変わるたびに、ひとつひとつ確認していかなければならないのが大変なところですね」。

B「しかも20年間稼働させれば、必ずどこかに不具合は生じます。それをメンテナンスしながらやっていくわけですから、いかにメンテナンスしやすいように最初に作り込んでおけるかが重要なんです。特に今回は初めての工事ですから、どんなことが起こりうるか想定しなければなりません。こうなると感覚的な判断が求められるんです。この感覚は経験でしか養われません」。

こうした経験こそが、入庁後にさまざまな業務に携わったことで培われたものなのだ。
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スケールの大きな仕事は
確実に自己成長に繋がる

 2020年7月からの供用開始を控え、まだまだ手探りでの作業は続いている。思い返せば苦労の方が多いとはいえ、このプロジェクトに携われたことで得られたものは大きいと語る。







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B「長年、工場の仕事に携わってきましたが、いずれも保守がメインとなる仕事が多く、立ち上げから関わるのは今回が初めてです。やったことがないことをやっているわけですから、想像以上の苦労もたくさんありますが、とにかく全力でやり遂げなければなりません。ただ、立ち上げからという貴重な経験をさせてもらえている実感はある。今は受電が円滑に進むことを一番に考えて取り組んでいます。きっと竣工して稼働が始まったら、これまでにない達成感を味わうんだと思いますね」。

A「確かに!今回のプロジェクトは初めてのことばかりなので、当然マニュアルもありません。正直、とても大変ですが、このプロジェクトに携わったことで、自分自身の技術者としての能力も確実にレベルアップしていると思います。この現場が終わると、ワンステップ上がっているかなと」。

 富田工場の再稼働に加え、現在北名古屋工場(仮称)の建設も進められている。この2工場の稼働が始まると、南陽工場の設備更新プロジェクトがスタートする予定になっている。よりよい環境と快適な市民生活に欠かせない事業はまだまだ続く。

「大きな責任を背負いつつも、インフラの核となるようなスケールの大きな仕事に携われる立場にあることは、技術者として大きなやりがいにつながっていると思いますね」。

3人は口を揃えて語った。